狛犬ファンならば、誰しも「自宅に狛犬を置きたい」という世迷言を考えてしまう瞬間があるのではないでしょうか。ご自宅の玄関に沖縄のシーサーを置いておられる方がいますが、やはり狛犬ファンとしては、本物の石像狛犬を手元に欲しい。しかしながら神社であるまいに、一般の家に狛犬はあまりに異質で似合わないのは、ちょっと冷静になれば分かる事(それ以前に、狛犬が玄関に逢ったら近所の目が・・・)

で、自宅で愛でる為の狛犬で我慢しようと考えた私は、暇を見つけてはネットオークションで狛犬を探していたのですが、中々「これだー」という狛犬には出会えませんでした。
ある日、ヤフーオークションでいつものように「狛犬」で検索していたら、目を疑うような江戸流れの石像狛犬が掲載されていたんです。それがこちらの江戸流れであります。

価格は25000円、写真を見る限り、江戸流れの特徴を取り入れた狛犬であり、巻き毛、毛並み、表情共に非常によくできているように見受けられた。
心配だったのは、二点。果たしてこの石像狛犬を購入して、家族に許しを得られるのか。そしてこの狛犬が神社からの盗難品ではないのか、という点である。
家族の許可は、事後承諾ということで許してもらうとして、問題は盗難品ではないかという問題。
写真で見る限り、猫のように丸まって座った狛犬が振り返っているポーズから、神社の境内に阿吽で置かれていたものではないと推測できた。ではこの狛犬の出生は?

私が勝手に想像したのは、江戸後期から明治大正の頃、私のように狛犬ファンがいて、自宅に狛犬が置きたいという想いが募り、自宅の庭用に、狛犬を作っている石工に、制作を依頼したのではないか。そんな狛犬が、自宅の庭に置かれている中で、いつしか主人も亡くなり、捨てるわけにもいかず、骨とう品店に流れてきたのではないか。そう考えた時には、もう私の指は、オークションをクリックしてしまっていた。

幸い、狛犬はライバル不在のまま、25000円で落札。無事自宅に到着した際に、家族に驚愕されたのは言うまでもないが、いまは、不思議と家族に可愛がられている。
振り向き江戸流れ まるで猫のよう
江戸流れ独特の巻き毛もモリモリ
後ろから見てもお顔が拝顔できます
ものすごく長いたてがみが美しい
こめかみと鼻先に欠けあり
前足に羽根あり、足先まで丁寧な彫り込み
都内骨とう品店にて25000円にて入手。
少ないお小遣いで購入すべきか、真剣に悩んだものの、私が最も愛する参道狛犬である「江戸流れ」の特徴を再現しつくした出にほれ込み、迂闊にも購入してしまった。直径30cmほど、重さは約7kg。見た感じは猫のサイズそのまま。自宅に灰色の猫がいる為、この狛犬を自宅の床に置いてあると、猫と間違えてしまう。

猫に間違える理由は、サイズの他にも、そのポーズにある。座り込んでいた猫を背後から近づいた時、「あんた誰」的に頭だけ振り返る猫の姿にそっくりなのだ。神社に鎮座している狛犬でこのポーズは無いだろうから、恐らくは自宅用だったのだろう。

江戸流れの特徴である「流れるようなたてがみと尾」「ソフトリームのような巻き毛」「顎や鼻の下の巻き毛」「楕円形の目玉」どれもが再現され、参道狛犬に負けず劣らず丁寧な彫り込みがなされている。

制作年月日や石工の名前は無く、時代も分からないが、江戸狛犬に順じた彫刻と、参道狛犬並みの丁寧な彫り込みからして、恐らく江戸狛犬が奉納されていた江戸後期から明治時代に作られたものではないかと勝手に推測している。

以下、勝手な想像。
狛犬をこよなく愛す人物が、自宅の庭や玄関ににも江戸狛犬を飾りたいと考えたものの、さすがに神社に奉納しているような蹲踞型の狛犬を飾るのは気が引けると考えた。そこで、好きな江戸狛犬の特徴を網羅しながらも、座り込んで振り向く姿の狛犬を、江戸狛犬を彫ることができる石工に注文し、自宅用にオーダーメイド。自分だったらそうする的な想像をしながら、自宅で自分だけの狛犬をじっくりと観察しニヤニヤしているのが最近自宅に帰った時の日課になっている。