「神社狛犬/見所私見」で紹介するのは、狛犬・神社参拝をする中で、
自分の中で、気づきがあった点を自分なりの意見として、取りまとめたものである。

タイトルの通り、私見に基づき書き綴られた文書であり、
一人の狛犬ファンの意見として、お読みいただければ幸いです。
① 神社の狛犬は石工(いしく)が魅せる、プライドと技術の結晶
② 神社の境内には、様々な面白見所ポイントが満載
③ 意外と見つかるそっくりさん。もしかして同じ石工の作品?それとも模倣?

① 神社の狛犬は石工(いしく)が魅せる、プライドと技術の結晶
狛犬の足元のボタンの造形の細かさに石工職人の気合を感じる。品川神社拝殿前の狛犬をリスペクトして彫りあげたものと推測されるが本家以上の装飾が施されている。

東京都 荏原神社
今にも襲いかかりそう獅子山の狛犬。圧倒的な躍動感においてこの獅子山に並び立つものはそうそう無い。是非海洋堂さんにフィギュア化してほしい逸品。

東京都 牛嶋神社
自分が彫りあげた狛犬が、神社に奉納される。
想像するまでもなく、これは石工職人にとって最上の名誉のひとつだったのではないか。

以前、かみさんとの狛犬談義の中で、私が「狛犬は芸術品だよね」といったら、「狛犬は工芸品だとおもう。だからこそ面白いんだよ」とかみさんに一蹴された。まさにこの言葉こそ、狛犬の魅力の本質を表している。狛犬は、芸術品ではなく、依頼されて作り上げた工芸品なのだ。

しかも、石工が彫りあげた狛犬は、神社という神々しい場所に、その身が朽ちるまで鎮座され、参拝に訪れる人々に注目され続けるのだから、石工の気合の入れようも、半端ないものであろう。
だからこそ、神社に行けば、石工の気合というか気負いが空回りしている狛犬、妙に装飾の凝っている狛犬、今にも動き出しそうな狛犬などと出逢う事ができるのだ。

話は逸れてしまうがが、我が家を建ててくれた大工さんが、「そこの神社の舞殿は私たちが手がけたんですよ」と誇らしげに語っていた。その神社は、近所なので良く参拝に行くのだが、立派な舞殿を見るたびに、私も「自分の家は、この舞殿の大工さんが建てたんだ」と思うと、なんだか無性に嬉しくなってしまうのだ。きっと、奉納する狛犬を注文された石工職人たちも、同じように、緊張しながらも誇りと意地を胸に、持てる技術とセンスを駆使して狛犬たちを彫りあげたのだろう。

そう思うと、石工職人の想いが込められた狛犬たちがますます愛おしく感じてしまう。

② 神社の境内には、様々な面白見所ポイントが満載
鳥の水飲み場
境内の公園内にあった亀?とあひる?
時代を感じさせる文面
高麗神社のキャラクター トライくんとミライちゃん
仕事の関係上、神社の神事に参加させていただく機会を持ったのがきっかけで神社に興味を持ち始め、神社巡りに御朱印をいただく喜びを加え、更に狛犬の魅力に取りつかれて、今に至っている訳ですが、よくよく神社の境内を観察してみると、いろいろと不思議なもの、楽しいものが点在しています。

生まれ育った町が新興住宅地だった為か、神社が身近にない町に育ったのだが、きっと昔の子供は神社で遊んだりもしたのだろう。境内に公園を併設している神社をよく見かけるのもその名残か。残念ながら今まで、神社の公園で子供が遊んでいる姿を見たことはほぼ無いのが寂しい。神社の公園にかなりの確率で鎮座しているのが、動物乗り物系遊具。しかもどれも、いまいち可愛くなく、誰もいない公園の寒々しさを更に増長するオブジェとなっているのが、悲しい。

また、他にも、写真のような「境内車馬往来禁止」の立て看板(明治のころに立てられたのか)
埼玉県高麗神社のマスコットキャラクター「トライくん」と「ミライちゃん」のパネル
様々な不思議なオブジェたちが迎えてくれるから、神社は隅々まで見る必要がある。


③ 意外と見つかるそっくりさん。もしかして同じ石工の作品?それとも模倣?
都内 市谷亀ケ岡八幡宮
都内 王子稲荷神社
どちらも、石工の個性がトコトン出ている顔立ちの江戸尾立。立派すぎるまつ毛で狛犬の瞳が見えない所や特徴的な耳など共通点が多く、恐らくは同じ石工職人と推測される。この二つの狛犬の大きな違いは、恐らく依頼主である奉納した方々から支払われた制作資金の差。どちらも手抜きなしの素晴らしい作品であることは疑いようもないのだが、王子稲荷神社の狛犬は、毛並みが風が吹けばたなびくかのようなきめ細かい彫りが施されており、鎮座する台座にも透かし彫りがなされる超豪華版。頭に宝珠も乗ってますし、いろいろな意味で豪華バージョンになっている点も面白い。
都内 赤坂氷川神社
千葉県 松戸神社
都内散策で一番の楽しみは、流れるような毛並みが美しい江戸流れに出会えることであるが、その中でもベストワンに上げたいのが、この赤坂氷川神社の江戸流れ。常にこの赤坂氷川神社の狛犬を基準に江戸流れの良しあしを測っていた自分が、千葉県松戸市に鎮座するこの江戸流れに出会った時には、世の中、同じレベルで感動させてくれる狛犬がいるものだと衝撃受けたものだが、よくよく写真を見てみると、これは間違いなく同じ石工によるものであろう。建立年も、赤坂氷川神社が弘化(1844-1847)、松戸神社が天保12年(1841)と5年以内の差しかないことからも同じ石工による作品であることが想定される。
千葉県 国府神社
千葉県 白幡神社
どちらも千葉県市川市に鎮座する狛犬。頭でっかちなまるで「ポケモン」のような可愛らしい狛犬は、誰が見ても同じデザイン。実はサイズは全く違っており、白幡神社のものは、国府神社の二倍近くあり、獅子山となっている。どちらも石工の名前に「林」という名が彫り込まれている。
都内 品川神社
都内 荏原神社
典型的な模写タイプ。言い方を変えれば、リスペクトして作られた狛犬。
狛犬に絡む二体の子狛犬のポーズ、子狛犬が加え牡丹の花。構図としては、全く同じ。円丈師匠の説によれば、品川神社の狛犬を手本に作られたのが荏原神社の狛犬ということ。しかもデザインの完成度、丁寧な彫り込みは、オリジナルより模倣したものが良くできている。後だしじゃんけんなのだから、完成度が高いのは当然と言えば当然だが、江戸ッ子気質から考えれば、品川神社のよりもっと派手に贅沢に!という気持ちから彫られたものと思いたい。
自宅と単身赴任先を行き来する中、都内中心に神社散策=狛犬探訪を行っていると、まれに「この狛犬と前に逢ったような」といった既視感(きしかん)いわゆるデジャブを感じることがある。
狛犬観察を続けていると、若干なりとも眼が肥えてくるようで、全く別の土地に鎮座している狛犬であるはずなのに、奇妙なほど似通ったものがあることに気がついた。
それも冷静に考えてみれば当然、同じ石工が別々の土地の神社への奉納の際、依頼されて彫りあげたこともあるだろう。それでも、全く違う場所で、同じデザインの狛犬や特徴の似通った狛犬に出会うと、なんだか見知らぬ土地で、旧友に逢ったかのような嬉しさがこみ上げてくる(のは私だけ?)
私の私見では、姿形が似通った狛犬には、大きく三つのパターンがあると感じる。
 ① 注文が殺到(?)している人気の石工職人の作品かな?的な狛犬
 ② 地元の石工職人に頼んだであろう狛犬
 ③ 見本が無い狛犬故に、すぐれたデザインの狛犬を模倣したもの
 ④ 昭和後期以降に奉納された岡崎型狛犬。
その中でも④は、最近奉納された狛犬によく見られるものであり(岡崎型狛犬の解説はこちら)似てる似てない以前に、狛犬を追いかけていれば、出逢う頻度も比例して上がってしまい、特に珍しいものではなくなってしまうから論外。
①~③のパターンは、上記写真で紹介したものしか、2013年春現在では確認出来ていない。都内中心の狭いエリアでも同じ職人による作品がほとんど見つけられないという事は、一人の石工職人が、職人人生において彫りあげる狛犬って意外と少ないのかも知れない。この結論は、これからの私の狛犬探訪によるデータ蓄積て解析していきたい。
皆さんもぜひ、たくさんの狛犬を散策しながら「おっ、この狛犬と以前に出会ったことある」と感じる楽しい出逢いを体験してみてください。