狛犬のしっぽ 超おススメ 必見の逸品狛犬
様々な狛犬たちと出逢っていく中、まれに狛犬ファンの心を射抜く程の、絶品狛犬に出会うことがある。これから紹介するのは、私を感涙させ、狛犬への愛を更に深めさせた、最上の狛犬たちである。狛犬との出会いは、一期一会。その瞬間に、そのタイミングで出逢えたからこそ、逸品狛犬として心に刻まれたものであり、誰が何と言おうと、ここで紹介する狛犬は、私の中では最高の狛犬たちなのである。
① 狛犬巡りのきっかけとなった、苔背負う江戸狛犬の逸品
② 先代 両足を失った狛犬を境内の片隅に大切に鎮座させている葛飾八幡宮
③ 狛犬の博物館「赤坂氷川神社」江戸流れの逸品。どの角度から見ても美しい
④ 神仏習合の名残を残す野田愛宕神社の青銅狛犬の傑作
⑤ これぞ江戸獅子山 完璧な造形美で見る者を魅了する牛嶋神社の獅子山
⑥ 千葉県市川市の名工 小林治兵衛が生み出したオリジナリティあふれる江戸流れ
⑦ 稲荷神社なのに狛犬? 江戸尾立ち 都内屈指の名品。炎のしっぽ

① 狛犬巡りのきっかけとなった、苔背負う江戸狛犬の逸品
東京都 大國魂神社
2012年12月、当時御朱印目当てで神社巡りにハマり始めていた矢先、単身赴任先から近い武蔵野線府中本町駅にある大国魂神社へ参拝。小雨の降る中、拝殿前に鎮座しているこの江戸狛犬と出逢った時、狛犬自体の完成された美しさと共に、雨に濡れた緑色の苔と岩が感じさせる歴史に、ただ素直に感激してしまった。都内に鎮座する江戸狛犬には、この狛犬より美しい造詣のものが数多く存在する。それでも、この大國魂神社の狛犬には、すべてにおいてベストバランスな完成度を感じずにはいられない。大國魂神社にはこの他、多数の狛犬が鎮座する都内でも有数の狛犬王国であり、狛犬の魅力を知りたい人はぜひ訪れてほしい神社であり、最初に出会ってほしい狛犬である。


② 先代 両足を失った狛犬を境内の片隅に大切に鎮座させている葛飾八幡宮
千葉県 葛飾八幡宮
自宅からほど近く、初詣も含め今までに何度も参拝していた神社であるにも関わらず、狛犬に関心を持ち、意識して探すようになって初めて目に入った先代狛犬。恐らくは震災などの影響で台座から落下し、その際阿狛犬の両足四本が破損。そのまま、境内隅に場所を移して保管しているものと思われる。
四足で立っており、恐らくは獅子山にいたものと推測される。
当日は関東でも珍しく大雪が降った後であり、雪が先代の物悲しさを更に増長させて思わず、頭の雪を払ってしまった。高い台座からおろされている故に、じっくり観察も可能。足以外に大きな破損個所も無く、このまま大切に境内の片隅で保管してもらいたい名品。


③ 狛犬の博物館「赤坂氷川神社」江戸流れの逸品。どの角度から見ても美しい
東京都 赤坂氷川神社
「狛犬の博物館」と呼ぶにふさわしい狛犬ファンの楽園。
「江戸流れ」「獅子山」「招魂社系」「はじめ」「先代」更に「きつね」にも逸品が鎮座。狛犬の魅力を誰かに伝えたいならば、この赤坂氷川神社に連れて行こう。
最初に紹介するのは、参道から最初に迎えてくれる江戸流れ。
たっぷりある美しい毛並みに美しさ、どの角度から見ても絵になる、江戸流れ独特の派手な造形。子供も丁寧に彫られており、見ていてうっとりする出来栄え。
鎮座する位置も低いので観察しやすいのも良い。
当日はやや曇り。これが狛犬の撮影には最適。木洩れ日や逆光にも邪魔されず、美しい狛犬を撮影できた。


④ 神仏習合の名残を残す野田愛宕神社の青銅狛犬の傑作
千葉県 野田市 愛宕神社
青銅狛犬というと、護国系の神社や大きな神社に鎮座していることが多い。
野田の愛宕神社も、本殿に施された細部まできめ細かく彫り込まれた透かし彫刻を見る限り、かなりの有力者が神社の建立に携わったことが窺われる。江戸時代、江戸川が物流の大動脈であったころに栄えた町であり、その頃の町の有力者が惜しみなく私財を投じて建立したのが、本殿であり、この青銅狛犬であったのだろう。大概、そのような経緯で奉納された狛犬は、どうしても自身の威厳を伝えようと、妙に仰々しい、派手な狛犬になりがちだが、こちらの愛宕神社に奉納した方は、かなりの仁徳の持ち主だったようで、この狛犬も細部にまで手が入った丁寧な作りながら、派手さは無く、まさにいぶし銀の逸品(青銅だけど)
寺のようにも見える愛宕神社拝殿の色合い、デザインとの調和が保たれており、力強く、それでいてどことなくユーモアもあり、精悍な顔立ちは、見ていてうっとりしてしまうほど。
他の角度の写真が狛犬図鑑のほうに掲載されているので、是非見ていただきたいが、この狛犬の魅力は、実際に愛宕神社に出向いてもらうことでしか伝えることが出来ない。
本殿の見事な彫刻と合わせて、是非訪れていただきたい神社である。


⑤ これぞ江戸獅子山 完璧な造形美で見る者を魅了する牛嶋神社の獅子山
東京都 牛嶋神社
牛嶋神社の獅子山の前に獅子山無し、牛嶋神社の獅子山の後に獅子山無し
都内周辺に数多く鎮座する獅子山の中でも、圧倒的存在感と完成度において、牛嶋神社のこの獅子山をNo.1に上げる狛犬ファンが多いのも、実物を目の前にすれば誰もが納得せざるを得ないはず。
今にも動き出しそうな立ち姿、流れるように彫り込まれた美しい毛並み、どの角度からも絵になる完璧な造形、これほどの狛犬は、めったにお目にかかれるものではない。
左側の獅子山は、子落とし。
右側の狛犬に比べて、柔和で柔らかそうな体つきの親狛犬と、獅子山の下から親を見上げるぷっくりとしたお腹の子狛犬。映画のワンシーンのような構図が素晴らしすぎる。
対して右側の狛犬は、獅子山に勇ましく立ち、参拝者を見下ろす。左の狛犬に対して明らかに筋骨隆々として、太く逞しい四肢。大地を踏み締める重量感を感じさせる立ち姿は、圧巻の一言。
いつまでも見ていたい衝動に駆られる、狛犬ファン必見の逸品。


⑥ 千葉県市川市の名工 小林治兵衛が生み出したオリジナリティあふれる江戸流れ
千葉県 市川市 神明(豊受)神社
行徳街道伊勢宿沿いには、大小様々な神社が集中しているが、その中でも狛犬に関して言えば、この神明神社の江戸流れの出来が群を抜いている。
それもそのはず。こちらの神明神社からこの江戸流れを彫りあげた名石工「小林治兵衛」の石材店が、すぐ近くで今も営業しているのだ。球江戸川を挟んだ稲荷木の稲荷神社のきつねや市川市菅野の白幡天神社の狛犬にも石工の名に「治兵衛」と彫り込まれており、恐らく、「治兵衛」の名前代々引き継いで来たのだろう。今回紹介する神明神社、稲荷木の稲荷神社、市川市菅野の白幡天神社はいずれも建立年が30年以内であり、何代目かは分からないが、同じ「治兵衛」が彫り込んだものであり、そのいずれもが素晴らしい彫刻であることは、見ればだれもが感じるはずである。
前置きが長くなってしまったが、今回紹介する神明神社の狛犬は、江戸流れとして完成度の高い狛犬であると同時に、オリジナリティあふれた野心的な作品であるという点で、狛犬ファンをうならせる逸品と呼ぶに値する。
特出すべきオリジナリティとは、阿吽双方にしがみついている子狛犬である。
なんと子狛犬も阿吽の表情をしているのである。ありそうでなかった工夫であり、子狛犬の彫り込みが親狛犬以上に丁寧なのも、参拝者の目線がむしろ子狛犬に近いことを狙っての細工なのかも知れない。
更に注目すべきは子狛犬の独創的なポーズ。吽の子狛犬は背中に乗ったポーズ。これ自体は都内でも良く見かけるパターンだが、親の背中にしがみつくかのようにどっしりと構えた足首、尾と足首を親狛犬と放して彫り込む丁寧な作り。更にユニークなのは、阿のしがみつき子狛犬。台座から落ちまいと親に必死にしがみつく狛犬の必死な姿勢と、踏ん張った足の緊張感が見事に表現されている。
確認した「治兵衛」の作品では、晩期にあたる作品であり、石材店からも近い神社であることから、文字通り店の看板を賭けて彫りあげたのであろう、魂のこもった逸品であり、私の住んでいる街にこのような素晴らしい狛犬があることを誇りに感じている。


⑦ 稲荷神社なのに狛犬? 江戸尾立ち 都内屈指の名品。炎のしっぽ
東京都 北区 王子稲荷神社
行稲荷神社なのに狛犬?
王子稲荷神社には、拝殿内の装飾、拝殿前に鎮座するこちらの江戸尾立ちも含め、狛犬度満載。今回紹介する江戸尾立ちは、都内屈指の出来栄え。

とにかく異常なまでの細やかな彫り込みに感服。巻き毛の一本一本が丁寧に彫り込まれており、こてこての装飾なのに見事なバランス。尾はまるで燃え上がる炎のよう。台座にまで見事な透かし彫りがなされており、まさに石工渾身の作品。
あらゆる角度から鑑賞に耐えうる顔の造形も見事。

こちらの江戸尾立ちとそっくりなのが、
市谷亀ケ岡八幡宮」の江戸尾立ち
都内では、有名な狛犬を模写したそっくりさんが多数存在するが、こちらの江戸尾立ち二体は、単に似ているというだけでなく、技術的に部分に共通点が多いことから、恐らく同じ石工によるものと思われる。しかしながら、恐らく頼まれた時の制作料が違ったのであろう。王子稲荷神社の江戸尾立ちの方が、彫り込みの細かさで数段上の出来栄えとなっている。