狛犬大図鑑  
 分類 江戸流れ 千住神社 東京都足立区千住宮本町24-1
 建立年 文政13年(1830)5月  鎮座位置 拝殿前
 石工 不明  参拝日 2016年04月6日(水)
京成線千住大橋駅から徒歩15分ほど、境内の手前には明治創業の古い酒店や昭和を思わせる銭湯があり、いかにも江戸の下町といった風情の住宅街に鎮座する神社。境内には、二対の狛犬と、稲荷神社が祀られており、立派なお稲荷様も鎮座されています。

拝殿前には、都内でも屈指の出来栄えであり、自分自身の東京江戸狛犬ベスト5に名を連ねる、見事な江戸流れが参拝者をお出迎えしてくれています。当日参拝されていた年配の女性の方も、ふと見上げたこの狛犬を見て「すごい立派な狛犬ねー」と驚嘆しておりましたが、それはもう、誰が見ても、その出来栄えは、別格なのであります。
筋骨たくましい体躯に、生き物独特の柔らかさを感じさせる見事な彫刻。毛並みは毛先まで隙の無い美しさで彫り込まれ、体毛まで一本一本丁寧に施された姿に、惚れ惚れとさせられる。すべての角度において、造形美を損なうことのない見事な造作は、撮影している自分自身も、まるで人間のモデルを撮影しているかのように、少しの角度を変えただけで、表情すら変わっているかのように錯覚させてくれる。
足元には阿吽共に子狛犬がいるが、吽側は、幼児体系で生まれて間もないか細さがあり、阿側には、ある程度成長し、成人の赴きも感じさせる逞しさで作り分けている。ネコ科特有の柔らかさと機敏さを表現したような筋肉の表現も見事であり、足元の肉球は、ものすごく大きく踏まれたら気持ちよさそう。

この見事な江戸流れが作られたのは、文政13年(1830)年。江戸流れの中でもかなり古い部類に入るが、江戸流れは、この後明治に向けて製作の全盛期を迎えるのだが、そのいずれも、千住神社の江戸流れを技術的にも、芸術的にも超えられていない。初期にして、最高の完成度を見せるこの狛犬を作り上げた石工は、誰のか?実はこの狛犬とそっくりな江戸狛犬が、ここからそう遠くない墨田区の牛嶋神社に鎮座している。個人的に、江戸狛犬の中で、一番の出来栄えと思っているこの牛嶋神社の狛犬が作られたのが、文政10年、千住神社の狛犬が作られた3年前であり、距離的な近さからも、恐らく同じ石工による作品であろう。これほど見事な狛犬を彫られた石工であるから、まだ他にも作品があるのではないかと思われるが、今のところこの二体しか同じ作風の狛犬にはお目にかかれていない。この見事な江戸流れを、是非末永く大切にしていきたいものである。