狛犬大図鑑  
 分類 江戸流れ 神明豊受神社 千葉県市川市妙典1-10
 建立年 嘉永六年(1854)七月  鎮座位置 参道途中
 石工 小林治兵衛  参拝日 2015年11月10日(火)
東西線妙典駅から徒歩10分ほどの行徳街道は、江戸末期以降の古い建物がまだ残っている歴史ある通りであり、数多くの寺・神社が街道沿いに鎮座している。残念ながら現在は、せっかくの観光コンテンツを生かし切れておらず寂しい街道となっているが、妙典駅から行徳駅まで、旧道沿いを散歩すると、様々な歴史ある建築物とともに多くの狛犬たちにも出会うことが出来る。

旧道沿いの神明豊受神社には、小林治兵衛(じへえ)の石工の名が刻まれた見事な江戸流れが鎮座している。この神明豊受神社の近くには、江戸末期の石工である小林治兵衛の名前を冠した「小林治兵衛石材工業(有)」なる会社が今でも営業を続けておられる。恐らく、この狛犬を彫り上げた石工の名を代々継いだ石材店であり、近隣の神社にある真新しい鳥居は、この「小林治兵衛石材工業」の名が刻まれている。小林治兵衛なる人物、同じく市川市菅野の白幡天満宮に鎮座する江戸尾立(写真中央)にも同じ名が刻まれている。石材工業に隣接する稲荷神社の狐も恐らく、この小林治兵衛の作品であろうと推測される(写真下左)

神明豊受神社に鎮座するのは、巨大な体躯の江戸流れ。やや頭でっかちで全体のバランスが悪く、タテガミや尾の彫刻も、若干荒さを感じさせる。しかしながら、阿吽それぞれに配置されている子狛犬には、見事なオリジナリティを感じさせる。
吽側は、背中から悪戯っ子のように飛び出し、阿側は、まるで母親の足にしがみ付いている甘えん坊のよう。親狛犬以上に丁寧に彫刻がなされており、石工の並々ならぬ子狛犬=子供への愛情を感じてしまう。

こちらの狛犬、かなり部分的に黒ずんでおり、一部高熱により石がはがれ落ちたような個所も見られる。拝殿が真新しいことから、恐らくこの一帯は、第二次大戦中大きな空襲に見舞われたものと思われる。この界隈の狛犬の多くが焦げてしまっており、無事に今、この場所に鎮座していることが、ただただありがたく思えてならない。