狛犬大図鑑  
 分類 仙台狛犬  鏑八幡神社  岩手県花巻市東和町土沢5区169
 建立年 不明  鎮座位置 拝殿前
 石工 不明  参拝日 2013年3月11日(水)
東日本大震災四周忌にあたるこの日、仕事で岩手県釜石市へ。帰り道、遠野を抜けて、新花巻駅まで約2時間の道のりの中、駅まであと数キロの位置に鎮座する、鏑八幡神社へ立ち寄る。
当日は、三月の中旬に差し掛かろうとしているとは思えない、悪天候。遠野周辺ではマイナス五度の寒さ。花巻市に入ってもご覧のとおり、一面雪景色。ほぼ吹雪いているといっても差支えない状況の中、お目当ての狛犬に逢いに、参拝させていただきました。

雪が降り積もる中、真っ赤な両部鳥居の先は、思いのほか短い階段にほっとしつつ、登り切った先に、雪に埋もれた狛犬が鎮座。手で雪を払ってみると、実にバランスの良い、見事な狛犬が出てまいりました。

小ぶりな頭から、やや長めの首、そして細身の身体へと流れるラインが特に美しい。足の下は、くり抜かれておらず、全体としては、荒々しさの残る彫刻ではあるが、他の狛犬にはない、独特の存在感を感じさせる。前足の付け根の小さな羽、美しく垂れ下がるタテガミ、吽のひときわそびえ立つ角、顔全体のパーツが中央に集中していることで、小柄な顔と精悍さが見事に表現されている。尾を台座にかかるように彫刻しているのは、台座から狛犬まで一つの石で彫り上げたという石工のメッセージであり、都内の江戸流れによく見られる技法だが、台座の後ろに尾を垂らすのは初めてお目にかかった。

建立年は不明だが、石の様子、造作の技術的に、江戸中期のころだろうか。台座には、奉納者として「酒屋 儀兵衛」の名が刻まれていた。

隣接している北上市までは、仙台藩であったことからか、この狛犬も、仙台でよく見られる狛犬の造作に似ている点が多い。厳しい雪の中、参拝者をどことなく優しく迎えてくれる、癒し系の狛犬である。

当日は、横殴りの雪で、厳しい天候下での参拝であったが、数百年の風雪に耐え続けた狛犬たちの力強さを、厳しい雪が引き立てているようで、雪もまた良し!と思ってしまいつつ、今度は、すっきりと晴れた日に参拝し、ゆっくりこの見事な狛犬を観察したいと思っているのもまた事実。逆もまたしかり、要するに、また会いに来たいと思わせる、素晴らしい狛犬ということなのだ。

追加情報 2015年4月18日(土)
長い冬を超え、ようやく東北にも春が訪れました。関東ではとっくに葉桜となっていますが、岩手県ではようやく今週末が満開の桜が春の訪れを高々に謳いあげておりました。
前回雪まみれだった狛犬もすっかり春の装い。吹雪と戦いながらの撮影だったあの時が嘘のよう。相変わらず、個性的、かつ可愛らしい狛犬であります。私とすれ違いで参拝に訪れた観光客らしき女性二名の方が「この狛犬、かわいいー」と声を上げてました。この狛犬の魅力に気づいていただき、そして狛犬を愛でていただき感謝感激であります。
   
   
   
   
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