狛犬大図鑑  
 分類 獅子山  牛嶋神社 東京都墨田区向島1-4-5
 建立年 文政十年(1827)二月  鎮座位置 拝殿前
 石工 不明  参拝日 2015年1月13日(火)
2015年 年初め狛犬散策のスタートに相応しいのは、やはり、自分自身の狛犬探究の原点でもある牛嶋神社であろう。
ということで、実は、前日まで5日間インフルエンザで寝込んでおり、リハビリも兼ねて、神社参拝、そして牛嶋神社の逸品狛犬に逢いに、浅草へと足を運んできました。

牛嶋神社は、東京の新たな観光名所でもある「東京スカイツリー」から徒歩10分、東京を、日本を代表する老舗観光地である浅草駅から徒歩15分、隅田川沿いにひっそりとたたずむ由緒正しい神社である。ここに、約200年前に建立された、見事な獅子山が鎮座している。こちらの牛嶋神社には、この傑作獅子山の他にも、江戸尾立が二対、招魂社系が一対、そして実は拝殿後ろの柵の中にこっそり鎮座する先代狛犬が一匹と、狛犬ファンを唸らせる見事な狛犬たちが鎮座している。いずれの狛犬たちも、他の神社では、神社の顔になれるほどの素晴らしい狛犬ぞろいではあるが、ここで紹介する獅子山を前にしては、それも霞んでしまうのはやむを得ないことであろう。

はっきり言おう。牛嶋神社の獅子山は、
2014年時点での私の狛犬ランキング No.1である。

拝殿を前に、左側に鎮座するのは、獅子落としの物語を再現したものであり、右側に鎮座するのは、敵から子供を守る為高台から遠くを鋭い眼光で見張るもう一頭の狛犬となっており、これは都内獅子山でよく見られる典型的な型である。
左側の親子の狛犬は、千尋の谷に落とされた子狛犬が、やっとの思いで親のところに這い上がってきた瞬間をとらえたものであるが、その感動の瞬間を獅子山と親子の狛犬で見事に再現した、今風に言えば、ジオラマのような狛犬である。
写真から見てもわかる通り、あらゆる角度から撮影しても、そのすべてが絵になる、寸分のすきもない彫刻とは、まさにこのことであろう。細部に至るまで美しくこだわりを持って彫り込まれた彫刻が、この狛犬の存在感を際立たせている。
子狛犬は、まだ子供らしいぽってりとしたおなかを弛ませ、甘えるようなしぐさで、谷底から這い上がってきた自分を褒めてほしそうに懇願している。それを優しく見つめる母狛犬は、複雑に絡み合った見事なタテガミをなびかせて、優しそうな面持ちで子供を迎えているように見える。
ところが、後ろに回ってみると、母狛犬と思っていた狛犬の股には、見事な男性のシンボルが・・・。お父さんだったんですか、驚きです。

拝殿を前に、右側に鎮座する狛犬は、獅子山の頂に一人佇み、周りを警戒するように、厳しい目線で参拝者ににらみを利かせている。あまりの逞しさにこちらが、父狛犬だとばかり思っていたら、こちらの狛犬の股には、女性らしき彫刻が施されていました。そう思ってみてみると、母狛犬に比べて、やや身体がふっくらとしており、母性を感じさせる面持ちでもある。母狛犬のたてがみは、重なりあったたてがみが、浮き出るように立体的に彫刻されており、ただただ、石工の技術に唖然とさせられる。

どちらの狛犬も、どの角度からもスキのない造作で作られており、彫り上げた石工が、時が時ならば、一流の彫刻家として名を馳せたであろう、素晴らしいセンスと技術力と今季を兼ね備えたことが伺える。

この牛嶋神社へ、獅子山を見に来たのは、ここ二年で四回目であるが、何度参拝しても、この獅子山を越える狛犬には、まだお目にかかれていない。

ちなみに、下の写真
牛嶋神社の境内にある見事な牛の彫刻。この牛を後ろからみると、弛んだ脂肪が、ブヨブヨと動きそうな、柔らかさを表現した彫刻が施されている。これは、獅子山の柔らかそうなおなかの狛犬の彫刻の技術とよく似ており、私見だが、同じ石工の手によるものではないかと推測している。

また、下の写真の狛犬は、足立区の「千住神社」に鎮座する見事な江戸流れであるが、基本的な彫刻の技術、造作が非常に牛嶋神社の獅子山の狛犬と似ている。建立年も文政13年(1830)と牛嶋神社の獅子山の文政10年から三年後の作品となっており、都内にはまだこの石工の傑作狛犬が鎮座している可能性もあり、これから出会えることを心より楽しみにしている。
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