狛犬大図鑑  
 分類 江戸流れ  江島神社 神奈川県藤沢市江の島2-3-6
 建立年 慶応元年(1865)  鎮座位置 随身門前 大きな赤鳥居横
 石工 不明  参拝日 2014年5月31日(土)
久々の連休、家族サービスも兼ね、江の島へ。
当然目的は、江の島に鎮座する江島神社、というか来るまで知らなかったのですが、江の島自体が神社だったのですね。
それはもう、家族からは「結局狛犬が見たくてここに来たんだろう」という目で見られました。その通りなのですが。

神社の中には、素晴らしい狛犬たちが鎮座しており、狛犬ファン必見の神社。
その中でも特に素晴らしいのが、境内に入って最初にお出迎えしてくれるこの江戸流れであろう。

巨大な体躯、台座に尾がかかった美しい江戸流れだが、阿吽の様子はまるで違っている。
右側の阿は、シンプルで大型狛犬に多い、ざっくりとした彫刻が施されている、標準的な江戸流れであるのに対して
左側の吽は、知性さえ感じさせる美しい顔立ち、それを彩る縦横無尽に流れる美しい毛並み、湧き出る泉のように美しく台座へと流れる尾と、もはや彫刻として、美術品と呼べるレベルの素晴らしい江戸流れとなっている。

恐らくは、阿吽の作者が違うのであろう。同じ石工の工房でつくられたものだろうから、弟子と師匠、あるいは兄弟子と弟弟子、あるいは同僚のライバルか、お互いの技術を見せつけあうように作ったものなのか、結果を見れば、左の吽が、技術力、造作力、想像力すべてにおいて圧勝してしまっている。ここまで出来栄えのバランスを欠いた狛犬も珍しい。

改めて、吽の狛犬を見てみると、知性を持っているかのような端正な顔立ちに加え、さらなるアレンジとして、己がタテガミを口にくわえている。見方によっては、美しい女性のしぐさにも見えるし、何か悔いた感じにも見えるし、とにかく艶っぽいのだ。その鬣は首筋に向かい、美しく流れ、やがて尾に至り、まるで髪を美しく編んだかのような、ランダムでありながら規則性のある美しさを魅せる。これほどの完成度を誇る狛犬にはそうそうお目にかかれことはできない。

唯一悔やまれるのは、阿吽の出来栄えの違いだろう。左右対称を重んじる日本人には、この出来栄えの差はいかんともしがたい。吽側の完成度が高いほど、全体のバランスとしてみると、いびつになってしまう。

しかしながら、この阿は、実に美しい。まるで美女に見つめられているかのように錯覚してしまうほどだ。
是非、参拝の折には、この阿の狛犬と見つめあってください。
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